はじめに
前回の記事「1-2 なぜ今、SSBJへの対応が企業に求められるのか?」では、SSBJへの対応が企業価値向上や国際競争力維持に不可欠であることを解説しました。
1-2:なぜ今、SSBJへの対応が企業に求められるのか?
今回は、そのSSBJが策定するサステナビリティ開示基準の具体的な全体像に焦点を当てます。
SSBJ基準を構成する3つの主要な基準、すなわち「サステナビリティ開示ユニバーサル基準(適用基準)」、「サステナビリティ開示一般基準(テーマ別基準①)」、「サステナビリティ開示気候関連基準(テーマ別基準②)」の概要と、それぞれの基準がどのような情報開示を企業に求めているかを詳しく解説します。
SSBJ基準の構造と国際的な位置づけ
SSBJ基準は、国際的なサステナビリティ開示基準であるISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が公表したIFRS S1号(サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項)およびIFRS S2号(気候関連開示)を土台として、日本の制度環境や企業実務を考慮して調整が加えられています。
これにより、日本企業が国際的に整合性の取れた形でサステナビリティ情報を開示できるよう設計されています。SSBJ基準は、以下の3つの主要な基準で構成されています。
1. サステナビリティ開示ユニバーサル基準(適用基準)
2. サステナビリティ開示一般基準(テーマ別基準①)
3. サステナビリティ開示気候関連基準(テーマ別基準②)
これらの基準は、企業がサステナビリティ関連のリスクと機会を特定し、それらが企業の事業活動、戦略、財務状況に与える影響を投資家やその他のステークホルダーに透明性高く伝えることを目的としています。
1. サステナビリティ開示ユニバーサル基準(適用基準)のポイント
サステナビリティ開示ユニバーサル基準は、SSBJ基準全体の基本的な枠組みと原則を定めています。これは、企業がサステナビリティ関連財務情報を開示する際の「羅針盤」となるものです。
| 開示の目的と適用範囲 | どのような情報を、誰に対して、どのような目的で開示するのかを明確にします。サステナビリティ関連のリスクと機会が企業の価値創造にどのように影響するかを説明することが求められます。 |
|---|---|
| 基本原則 | 情報の重要性、比較可能性、検証可能性、適時性といった開示の質を高めるための原則が示されます。 |
| 情報の位置づけと記載場所 | サステナビリティ関連財務情報が、財務諸表とどのように関連し、どこに記載されるべきかといった基本的なルールが定められています。例えば、有価証券報告書における記載が想定されています。 |
2. サステナビリティ開示一般基準(テーマ別基準①)のコア・コンテンツ
サステナビリティ開示一般基準は、気候関連以外の幅広いサステナビリティ関連のリスクと機会に関する情報開示を求める基準です。
ISSBのIFRS S1号の「コア・コンテンツ」に相当し、以下の4つの主要な構成要素(柱)に沿って情報開示が求められます。
| ガバナンス | 企業がサステナビリティ関連のリスクと機会をどのように監督・管理しているか、その責任体制やプロセスを開示します。取締役会や経営陣の役割、専門委員会の設置状況などが含まれます。 |
|---|---|
| 戦略 | サステナビリティ関連のリスクと機会が、企業の事業活動、ビジネスモデル、戦略、財務状況に与える影響、およびそれらへの対応方針を説明します。短期・中期・長期の視点での分析が求められます。 |
| リスク管理 | 企業がサステナビリティ関連のリスクを特定、評価、管理するプロセスや内部統制、手順を明らかにします。既存のリスク管理プロセスへの統合状況なども含まれます。 |
| 指標及び目標 | サステナビリティ関連のリスクと機会を評価・管理するために使用する指標(KPI)と、設定している目標、その進捗状況を開示します。例えば、水使用量、廃棄物発生量、人権に関する指標などが該当します。 |
この基準は、気候変動以外の多様なESG課題に対する企業の取り組みを包括的に示すことを目的としています。
3. サステナビリティ開示気候関連基準(テーマ別基準②)の深掘り
サステナビリティ開示気候関連基準は、気候変動に関連するリスクと機会に特化した情報開示を求める基準です。
ISSBのIFRS S2号に相当し、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言を基礎としています。
一般基準と同様に、以下の4つの主要な構成要素(柱)に沿って情報開示が求められます。
| ガバナンス | 気候関連のリスクと機会に対する企業の監督体制や責任、プロセスを開示します。 |
|---|---|
| 戦略 | 気候変動による短期・中期・長期のリスクと機会、それらが企業の事業活動、戦略、財務状況に与える影響、および対応方針を説明します。特に、シナリオ分析の結果を用いて、異なる気候変動シナリオ下での企業のレジリエンス(強靭性)を評価し、開示することが求められます。 |
| リスク管理 | 気候関連リスクの特定、評価、管理プロセス、およびそれらが企業の全体的なリスク管理体制にどのように統合されているかを説明します。 |
| 指標及び目標 |
気候関連のリスクと機会を評価・管理するために使用する指標と目標、その進捗状況を開示します。特に、温室効果ガス(GHG)排出量の開示が重要であり、以下のスコープに分けて算定・開示が求められます。
Scope 1: 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出量(燃料の燃焼、工業プロセスなど) Scope 2: 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出量 Scope 3: Scope 1、Scope 2以外のサプライチェーン全体での間接排出量(原材料の調達から製品の廃棄まで) |
気候関連基準は、気候変動が企業に与える財務的影響を具体的に示すことで、投資家が企業の持続可能性に関する判断材料を得られるようにすることを重視しています。
まとめ
SSBJ基準は、「サステナビリティ開示ユニバーサル基準」、「サステナビリティ開示一般基準」、「サステナビリティ開示気候関連基準」という3つの主要な基準で構成されており、それぞれがサステナビリティ情報開示の異なる側面をカバーしています。
これらの基準は、ISSBのIFRS S1号およびS2号と整合性を保ちつつ、日本企業が透明性高く、比較可能なサステナビリティ情報を開示するための枠組みを提供します。
今回は、SSBJ基準の全体像と、各基準が求める情報開示の概要について解説しました。
次回の記事では、「2-1 適用基準(ユニバーサル基準)のポイント」として、サステナビリティ情報の開示における基本的な規則や手順、開示情報に必要な裏付け、および比較情報の提示義務と経過措置について詳しく解説します。
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参考資料
SSBJ サステナビリティ基準委員会 Webサイト
https://www.ssb-j.jp/jp/
SSBJ サステナビリティ基準委員会 サステナビリティ基準委員会(SSBJ)
https://www.ssb-j.jp/jp/list-ssbj_2.html
IFRS Foundation
https://www.ifrs.org/
International Sustainability Standards Board - IFRS Foundation
https://www.ifrs.org/groups/international-sustainability-standards-board/
金融庁 金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/sustainability_disclose_wg/sustainability_disclose_wg_index.html