はじめに
前回の記事「1-3 SSBJ基準の全体像:ユニバーサル基準、一般基準、気候基準」では、SSBJ基準が3つの主要な基準で構成されていることを解説しました。
1-3:SSBJ基準の全体像:ユニバーサル基準、一般基準、気候基準
今回は、その中でも最も基礎となる「サステナビリティ開示ユニバーサル基準」、通称「適用基準」に焦点を当て、サステナビリティ情報の開示における基本的な規則や手順、開示情報に必要な裏付け、および比較情報の提示義務と経過措置について詳しく解説します。
適用基準の重要性と役割
SSBJの適用基準は、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が公表したIFRS S1号「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」を基盤としています。
この基準は、企業がサステナビリティ関連の財務情報を開示する際の「共通言語」を提供し、投資家が企業の価値創造能力を評価するために必要な情報が、一貫性のある形で提供されることを目指しています。
適用基準は、他のテーマ別基準(一般開示基準、気候関連開示基準)を適用する上での土台となり、すべてのサステナビリティ情報開示に共通する原則と要件を定めています。
サステナビリティ情報の開示における基本的な規則と手順
適用基準は、企業がサステナビリティ関連財務情報をどのように開示すべきかについて、以下の基本的な規則と手順を定めています。
1. 開示の目的と対象
開示の主な目的は、企業がサステナビリティ関連のリスクと機会をどのように管理し、それが企業の事業活動、戦略、財務状況にどのような影響を与えるかを、投資家やその他の資本提供者に伝えることです。
これにより、投資家は企業の長期的な価値創造能力をより適切に評価できるようになります。
2. 情報の記載場所と表示の仕方
SSBJ基準に基づくサステナビリティ関連財務情報は、企業の財務諸表と同時に開示されることが原則とされています。
日本では、有価証券報告書への組み込みが想定されており、財務情報とサステナビリティ情報が「つながり」を持って開示されることが重視されます。
情報の表示の仕方としては、明確性、簡潔性、一貫性が求められ、読者が容易に理解できるよう、箇条書きや表などを活用した分かりやすい表現が推奨されます。
3. 重要性の原則
開示する情報は、投資家の意思決定に影響を与える「重要性」があるものに限定されます。
企業は、自社の事業活動や戦略に関連するサステナビリティ関連のリスクと機会を特定し、その中で特に重要な情報を開示することが求められます。
開示情報に必要な裏付け(信頼性確保)
サステナビリティ情報の信頼性を確保することは、投資家からの評価を得る上で極めて重要です。
適用基準では、開示情報に必要な裏付けについて以下の点を求めています。
| 内部統制の整備 | 企業は、サステナビリティ関連財務情報の収集、測定、評価、開示プロセスにおいて、適切な内部統制を整備する必要があります。これにより、情報の正確性、完全性、信頼性が確保されます。 |
|---|---|
| 第三者保証の活用 | 開示情報の信頼性をさらに高めるために、第三者による保証(監査)の活用が推奨されています。特に、温室効果ガス排出量などの定量的な情報については、第三者保証が投資家からの信頼を得る上で有効な手段となります。金融庁も、サステナビリティ情報の信頼性確保に向けた保証のあり方について検討を進めています。 |
| 情報源の明確化 | 開示情報の根拠となるデータや情報源を明確にすることで、情報の透明性が向上し、信頼性の確保に繋がります。 |
比較情報の提示義務と経過措置
投資家が企業のサステナビリティへの取り組みの進捗状況を評価するためには、過去の期間との比較が可能な情報が不可欠です。
| 比較情報の提示義務 | 企業は、原則として、当期だけでなく過去の期間のサステナビリティ関連財務情報も開示し、比較可能な形で提示することが求められます。これにより、投資家は企業のパフォーマンスの変化や目標達成に向けた進捗を把握できます。 |
|---|---|
| 初年度適用時の経過措置 | SSBJ基準の適用初年度においては、企業の実務負担を考慮し、比較情報の提示について一定の経過措置が設けられる可能性があります。例えば、初年度は当期情報のみの開示が認められるなど、段階的な対応が考慮されることがあります。ただし、将来的には比較情報の開示が本格的に求められるため、企業は早期からデータ収集体制を整備しておく必要があります。 |
気候関連基準は、気候変動が企業に与える財務的影響を具体的に示すことで、投資家が企業の持続可能性に関する判断材料を得られるようにすることを重視しています。
まとめ
SSBJの適用基準は、サステナビリティ情報開示の基本的な枠組みと原則を定めるものであり、情報の記載場所、表示の仕方、信頼性確保のための裏付け、そして比較情報の提示義務と経過措置といった多岐にわたる要件を含んでいます。
これらの要件を理解し、適切に対応することは、企業が透明性の高いサステナビリティ情報を開示し、投資家からの信頼を獲得する上で不可欠です。
今回は、SSBJ基準の適用基準(ユニバーサル基準)のポイントについて解説しました。
次回の記事では、「2-2 一般開示基準(テーマ別基準①)のコア・コンテンツ」として、気候問題に直接関連しないサステナビリティ情報開示における「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の4つの構成要素について、それぞれの開示内容と求められる情報について解説します。
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参考資料
SSBJ サステナビリティ基準委員会 Webサイト
https://www.ssb-j.jp/jp/
SSBJ サステナビリティ基準委員会 サステナビリティ基準委員会(SSBJ)
https://www.ssb-j.jp/jp/list-ssbj_2.html
IFRS Foundation
https://www.ifrs.org/
International Sustainability Standards Board - IFRS Foundation
https://www.ifrs.org/groups/international-sustainability-standards-board/
金融庁 金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/sustainability_disclose_wg/sustainability_disclose_wg_index.html