はじめに

前節では、カーボンフットプリント(CFP)の基本的な概念と算定意義について解説しました。

第5章:カーボンフットプリント(CFP)とDPPの連携

5-1:CFPとは何か?その基本と算定意義


CFPは、製品のライフサイクル全体における温室効果ガス排出量を「見える化」する重要なツールです。

このCFP情報は、EUのデジタルプロダクトパスポート(DPP)において、製品の持続可能性を評価する上で特に重要な要素として位置づけられています。

DPPを通じてCFP情報が開示されることは、製品の環境性能評価にどのように貢献し、企業活動にどのような影響を与えるのでしょうか。

本記事では、DPPにおけるCFP情報の位置づけと、それが製品の環境性能評価に果たす役割について、ビジネスパーソン向けに分かりやすく解説します。

DPPにおけるCFP情報の重要性

DPPは、製品の「デジタル履歴書」として、そのライフサイクル全体にわたる多様な持続可能性情報を記録・共有する仕組みです。

この中で、CFP情報は、製品の環境負荷を定量的に示す最も重要な指標の一つとして位置づけられています。

ESPRの中核要件 EUの「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)」は、製品のライフサイクル全体を見据えたエコデザイン要件を課しており、その中でカーボンフットプリントの開示が重要な情報要件の一つとされています。特に、欧州電池規則では、EV用・産業用バッテリーに対してGHG排出量の開示が義務付けられており、DPPを通じてこの情報が提供されます。
環境負荷の「見える化」 CFPは、製品が環境に与える影響、特に気候変動への寄与度を数値で明確に示します。DPPを通じてこの情報が公開されることで、消費者、規制当局、投資家、そしてサプライチェーンの関係者すべてが、製品の環境性能を客観的に評価できるようになります。
比較可能性と意思決定の支援 標準化された方法で算定されたCFP情報は、異なる製品やサービス間の環境性能を比較する際の重要な基準となります。これにより、消費者はより環境に配慮した製品を選択しやすくなり、企業はサプライヤー選定や製品設計において、より環境負荷の低い選択を行うための客観的なデータを得られます。

DPPにおけるCFP情報の開示と活用

DPPを通じてCFP情報が開示されることで、様々なステークホルダーがその情報を活用し、持続可能な社会の実現に貢献します。

1. 消費者

製品に付与されたQRコードなどからDPPにアクセスし、製品のCFP情報を確認できます。

これにより、環境負荷の低い製品を意識的に選択する「エシカル消費」を実践しやすくなります。

企業はCFP情報を活用し、環境配慮型製品のPRやブランディングを強化できます。

2. 企業(製造事業者、サプライヤー、リサイクル業者など)

DPPに記録されたCFP情報を活用し、自社のサプライチェーン全体における排出量の多いプロセスを特定し、削減計画を策定できます。

サプライヤーは、自社製品のCFP情報をDPPで提供することで、取引先からのグリーン調達要請に応え、競争優位性を確立できます。

リサイクル業者は、DPPから製品の素材情報やCFPを把握することで、より効率的かつ環境負荷の低いリサイクルプロセスを計画できます。

3. 規制当局・金融市場

DPPは、規制当局がESPRなどの環境規制の遵守状況を監視するための重要なツールとなります。

金融市場においては、ESG投資の判断材料としてCFP情報が活用され、企業のサステナビリティへの取り組みが評価されます。

DPPにおけるCFP情報の課題と対応策

DPPにおけるCFP情報の開示・活用には、以下のような課題と対応策が考えられます。

データ収集の負荷

CFP算定にはサプライチェーン全体からの膨大なデータ収集が必要であり、特に中小企業にとっては大きな負担となる可能性があります。

対応策:産総研のIDEA(Inventory Database for Environmental Analysis)のような排出係数データベースの活用や、業界横断型のデータ連携プラットフォームの構築が有効です。

算定の精度と信頼性

CFP算定方法の解釈や使用する排出係数によって結果にばらつきが生じる可能性があり、算定結果の客観性や正確性をい担保するかが重要です。

対応策:ISO 14067などの国際標準に準拠した算定を行い、第三者検証機関による検証を受けることで、CFP情報の信頼性を高めることができます。

機密情報の保護

サプライチェーン全体のCFP情報には、企業の機密情報が含まれる場合があります。

対応策:DPPのシステム設計において、適切なアクセス権限管理や情報セキュリティ対策を講じることが不可欠です。

まとめ

デジタルプロダクトパスポート(DPP)において、カーボンフットプリント(CFP)情報は、製品の環境性能を定量的に評価し、持続可能な社会の実現を促進する上で極めて重要な位置づけにあります。

DPPを通じてCFP情報が開示されることで、消費者、企業、規制当局、投資家といった多様なステークホルダーが、より情報に基づいた意思決定を行うことが可能になります。

企業は、CFP算定における課題を克服し、信頼性の高い情報をDPPで提供することで、規制遵守だけでなく、競争優位性の確立と企業価値の向上へとつなげることができるでしょう。

今回はDPPにおけるCFP情報の位置づけについて解説しました。次節では、CFP算定がDPPの信頼性を高める理由について詳しく見ていきます。


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参考資料

2-1. カーボンフットプリント(CFP)- CO₂排出量評価の基本
https://alca-lca.com/magazine/lca/2-1-cfp-carbon-footprint-basics

6-2. グリーン調達法、デジタル製品パスポート(DPP)、建築物LCAなどの最新動向
https://alca-lca.com/magazine/lca/6-2-green-procurement-dpp-wlc