はじめに
近年、地球温暖化や気候変動問題への関心が高まる中、企業には温室効果ガス(GHG)排出量の削減に向けた具体的な取り組みが強く求められています。
排出量を効果的に削減するためには、まず自社の排出量を正確に把握し、透明性をもって報告することが不可欠です。
そこで世界的に重要視されているのが、「GHGプロトコル」という国際的な基準です。
本記事では、GHGプロトコルがどのようなものか、そしてなぜ今、これほどまでに世界中の企業やステークホルダーから注目されているのかについて、その背景と重要性を詳しく解説します。
GHGプロトコルとは? 世界標準の排出量算定・報告基準
GHGプロトコル(Greenhouse Gas Protocol)とは、企業やその他の組織が温室効果ガス(GHG)排出量を算定し、報告するための世界的な標準的な枠組みです。
これは、米国のシンクタンクである世界資源研究所(WRI)と、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)が共同で主導し、2001年に「The Greenhouse Gas Protocol: A Corporate Accounting and Reporting Standard」として初版が公表され、2004年に改訂版が発行されました。
GHGプロトコルは、特定の法律や規制によって義務付けられたものではなく、企業が自主的に排出量を算定・報告するための国際的なガイドラインとしての役割を担っています。
例えば、国際規格であるISO 14064や各国の法規制とは異なり、より広範な企業活動における排出量を網羅的に捉えることを目的としています。
このプロトコルが提供する共通の算定・報告方法を用いることで、企業は自社のGHG排出量を一貫性のある形で把握し、国内外のステークホルダーに対して信頼性の高い情報を提供できるようになります。
なぜ今、GHGプロトコルが世界で重要視されるのか
GHGプロトコルがこれほどまでに世界中で重要視される背景には、いくつかの複合的な要因があります。
1. 気候変動対策における企業の役割の増大
気候変動問題は、もはや環境問題の枠を超え、経済や社会全体に影響を及ぼす喫緊の課題となっています。
パリ協定に代表される国際的な枠組みや、各国政府による脱炭素政策の強化が進む中で、企業は単なる経済活動の主体としてだけでなく、気候変動対策の重要な担い手としての役割を強く求められています。
GHGプロトコルは、企業が自らの排出量を正確に把握し、削減目標を設定し、その進捗を管理するための基盤を提供します。
これにより、企業は自社の事業活動が気候変動に与える影響を具体的に認識し、責任ある行動へとつなげることが可能になります。
2. サプライチェーン全体の排出量把握の必要性
GHGプロトコルの最も特徴的な点の一つは、サプライチェーン全体の排出量を重視していることです。
企業の温室効果ガス排出量は、自社の工場や車両から直接排出されるもの(Scope1)や、購入した電力の使用に伴う間接排出(Scope2)だけではありません。
原材料の調達から製品の製造、輸送、使用、そして廃棄に至るまで、サプライチェーン全体で発生する多岐にわたる間接排出(Scope3)が、全体の排出量の大部分を占めることが少なくありません。
GHGプロトコルは、これらの排出源を「Scope1」「Scope2」「Scope3」という3つのカテゴリに分類し、企業が自社だけでなく、サプライチェーン全体における排出量を網羅的に把握することを推奨しています。
これにより、企業は排出削減の機会をサプライチェーン全体で特定し、より効果的な対策を講じることが可能になります。
3. 透明性と信頼性のある情報開示の要求
近年、投資家、顧客、従業員、地域社会といった多様なステークホルダーは、企業の環境への取り組み、特にGHG排出量に関する情報に対して、より高い透明性と信頼性を求めています。
| ステークホルダー | GHGプロトコルに準拠した情報開示のメリット |
|---|---|
| 投資家 | ESG評価向上、持続可能な企業としての魅力向上 |
| 顧客 | ブランドイメージ向上、顧客からの信頼獲得 |
| 規制当局 | 将来的な炭素税や排出量取引制度への対応準備 |
GHGプロトコルは、これらの要求に応えるための共通の言語を提供し、企業が信頼性の高い情報を開示することで、経営メリットやビジネス的な信頼性向上に繋がると期待されています。
まとめ
GHGプロトコルは、気候変動の深刻化、サプライチェーン排出量への意識の高まり、そして透明性の高い情報開示への要求といった現代のビジネス環境において、企業が持続可能な経営を実現するための不可欠なツールとなっています。
この国際的な基準に準拠することで、企業は自社の環境負荷を正確に把握し、効果的な削減策を講じるとともに、ステークホルダーからの信頼を獲得し、企業価値を向上させることができるでしょう。
今回はGHGプロトコルとは何か、そしてなぜ今、世界で重要視されているのかについて解説しました。
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参考資料
GHG Protocol. Standards & Guidance.
https://ghgprotocol.org/standards-guidance
GHG Protocol. Corporate Standard.
https://ghgprotocol.org/corporate-standard
GHG Protocol. The Greenhouse Gas Protocol: A Corporate
Accounting and Reporting Standard (Revised Edition).
https://ghgprotocol.org/sites/default/files/standards/ghg-protocol-revised.pdf
GHG Protocol. Corporate Value Chain (Scope 3) Accounting
and Reporting Standard.
https://ghgprotocol.org/standards/scope-3-standard