はじめに

GHGプロトコルは、企業の温室効果ガス(GHG)排出量を「Scope1」「Scope2」「Scope3」の3つの区分に分類し、算定・報告することを推奨しています。

第2章:Scope1, 2, 3を理解する - 排出量区分

2.1:Scope1とは:自社の直接排出


これらの区分を理解することは、自社の排出源を正確に特定し、効果的な削減戦略を策定する上で不可欠です。

本記事では、GHG排出量の区分の中でも最も基本的な「Scope1」に焦点を当て、それが具体的に何を指すのか、どのような排出源が含まれるのかを、具体的な例を交えながら詳しく解説します。

Scope1とは? 事業者による直接排出

Scope1排出量とは、事業者自らが所有または管理する排出源から直接発生する温室効果ガス排出量を指します。

これは、企業活動に伴って、自社の敷地内や自社が管理する設備から直接大気中に放出されるGHG排出量を意味します。

GHGプロトコルでは、Scope1排出源を以下の4つの主要なカテゴリに分類しています。

Scope1排出源のカテゴリ 概要
定置燃焼 工場や事業所内のボイラー、発電機、暖房設備などで燃料を燃焼させることによって発生する排出。
移動燃焼 自社が所有または管理する車両(社用車、トラック、フォークリフトなど)や船舶、航空機などで燃料を燃焼させることによって発生する排出。
プロセス排出 特定の工業プロセス(例:セメント製造における石灰石の分解、化学製品の製造プロセス)において、化学反応の結果として発生する排出。
漏洩排出 冷媒(フロンガス)、消火剤、メタンガス(天然ガスパイプラインからの漏洩など)といった製品や設備からの意図しないガスの漏洩による排出。

これらの排出源は、企業が直接的にその活動を管理・制御できるため、排出量削減に向けた対策を比較的講じやすいという特徴があります。

Scope1排出量の具体例

Scope1排出量の理解を深めるために、具体的な企業活動における排出源の例を見てみましょう。

1. 定置燃焼の例

工場:製品製造のために稼働するボイラーや炉で、天然ガス、重油、石炭などを燃焼させる際に発生する二酸化炭素(CO2)やその他のGHG。

オフィスビル:自社で所有・管理するビル内の暖房設備や給湯器で、都市ガスなどを燃焼させる際に発生するCO2。

自家発電設備:自社工場や施設に設置された自家発電機で、燃料を燃焼させて電力を生成する際に発生するCO2。

2. 移動燃焼の例

社用車:営業担当者が使用するガソリン車やディーゼル車、役員車など、自社が所有する車両の燃料消費に伴うCO2排出。

運搬車両:自社工場内で製品を運搬するフォークリフトや、自社で配送を行うトラックの燃料消費に伴うCO2排出。

建設機械:自社が所有するブルドーザーやショベルカーなどの建設機械の燃料消費に伴うCO2排出。

3. プロセス排出の例

セメント工場:石灰石を加熱してセメントクリンカーを製造する際に、石灰石(炭酸カルシウム)が分解されて発生するCO2。これは燃料の燃焼とは異なる化学反応による排出です。

化学工場:特定の化学製品の製造プロセスにおいて、副産物としてGHGが発生する場合。例えば、硝酸製造における亜酸化窒素(N2O)の排出など。

アルミニウム精錬:アルミニウムの電解精錬プロセスで、パーフルオロカーボン(PFCs)などの強力なGHGが発生することがあります。

4. 漏洩排出の例

空調設備・冷凍冷蔵設備:オフィスビルや工場、倉庫などで使用される空調設備や冷凍冷蔵設備から、冷媒として使用されているフロンガス(HFCs、PFCsなど)が漏洩することによる排出。

ガスパイプライン:天然ガスを輸送するパイプラインや貯蔵設備から、メタンガス(CH4)が漏洩することによる排出。

消火設備:特定の消火設備で使用される消火剤(ハロンなど)が、誤作動やメンテナンス時に漏洩することによる排出。

Scope1排出量を把握する重要性

Scope1排出量を正確に把握することは、企業にとって以下の点で極めて重要です。

直接的な管理責任:Scope1排出源は企業が直接所有または管理しているため、排出削減に対する企業の責任が最も明確です。

削減目標設定の基盤:自社の直接排出量を把握することで、具体的な削減目標を設定し、その達成に向けた計画を立てるための基礎データとなります。

規制対応:各国の環境規制や排出量取引制度において、Scope1排出量は直接的な規制対象となることが多く、正確な算定はコンプライアンス上不可欠です。

コスト削減:燃料消費量の最適化や設備の効率化は、排出量削減と同時に運用コストの削減にも繋がります。

Scope1排出量の算定は、企業のGHG排出量管理の出発点であり、その後のScope2、Scope3の算定へと繋がる重要なステップです。

まとめ

Scope1排出量とは、企業が自ら所有または管理する排出源から直接発生する温室効果ガス排出量のことで、定置燃焼、移動燃焼、プロセス排出、漏洩排出の4つのカテゴリに分類されます。

工場での燃料燃焼、社用車の利用、特定の工業プロセス、冷媒の漏洩などが具体的な例として挙げられます。

Scope1排出量を正確に把握し管理することは、企業の排出削減目標達成、規制遵守、コスト削減、そして持続可能な経営を実現する上で不可欠な要素となります。

今回はScope1:自社による直接排出について解説しました。


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参考資料

GHG Protocol. Standards & Guidance.
https://ghgprotocol.org/standards-guidance

GHG Protocol. Corporate Standard.
https://ghgprotocol.org/corporate-standard

GHG Protocol. The Greenhouse Gas Protocol: A Corporate Accounting and Reporting Standard (Revised Edition).
https://ghgprotocol.org/sites/default/files/standards/ghg-protocol-revised.pdf