はじめに

本記事では、SimaProの基本的な情報から、その強力な機能、メリット・デメリット、ライセンス体系、そしてどのような企業や研究機関に最適なのかを深く掘り下げて解説します。SimaProの導入を検討されているLCA担当者の皆様が、自社に最適なツールであるかを見極めるための判断材料を提供します。

1. SimaProの概要と開発元

SimaProは、オランダのPRé Sustainability社によって開発されたライフサイクルアセスメントソフトウェアです。1990年の初版リリース以来、LCA分野の進化とともに機能拡張を重ね、現在では学術機関、コンサルティングファーム、そしてグローバル企業に至るまで、幅広いユーザーに利用されています。

最新バージョンはSimaPro Craftとして提供されており、常に最新の知見と技術が反映されています。その長い歴史と豊富な導入実績は、ソフトウェアの信頼性と安定性を裏付けています。

2025年9月にはフィンランドのOne Click LCAと統合し、全産業に対応する世界最大かつ最先端のLCAプラットフォームを構築しています。

2. 機能と特徴:SimaProのメリット・デメリット

SimaProは、その多機能性と柔軟性により、複雑なLCA分析を可能にします。

・メリット

1. 豊富な搭載データベース

SimaProは、世界最大のLCI(ライフサイクルインベントリ)データベースである「ecoinvent v3」を標準で搭載しています。これに加え、「Agri-footprint」「US LCI」「EU & DK Input Output database」など、多岐にわたるデータベースに対応しており、世界中の産業と製品を網羅した詳細なデータを利用できます。日本の「IDEA」データベースにも対応しているため、国内サプライチェーンの評価にも活用可能です。

2. 高度な分析機能

感度分析(Parameter analysis) LCAモデル内の特定の入力値や仮定が結果にどの程度影響を与えるかを評価する機能です。これにより、LCA結果の不確実性を理解し、改善の優先順位を決定する上で重要な情報を提供します。
不確実性評価(Uncertainty analysis) モンテカルロ法を用いた不確実性分析により、データの信頼性や代表性の範囲を定量的に評価できます。これにより、LCA結果の信頼性を高め、より堅牢な意思決定を支援します。
シナリオ分析 パラメーター機能を活用することで、複数のシナリオを簡単に設定し、製品設計変更やサプライチェーンの最適化が環境負荷に与える影響を比較検討できます。
社会影響評価 SHDB (Social Hotspots Database) やPSILCAなどのデータベースをサポートし、製品のライフサイクルにおける人権問題や労働条件といった社会的な影響を評価するS-LCA(社会的ライフサイクルアセスメント)も可能です。
直感的な表現力 インベントリ分析や影響評価の結果は、棒グラフ、円グラフ、Sankeyダイアグラム、温度計表示など、多様な形式で視覚的に分かりやすく表示されます。これにより、LCAの専門家でなくとも結果を直感的に理解し、社内外へのコミュニケーションを円滑にします。

卓越した操作性(UI/UX)

非常に多機能でありながら、複雑な計算や表示の切り替え操作はボタン一つ、タブの切り替え、プルダウンの変更で簡単に行えます。モデルの構造を一覧できるツリー表示や、影響度合いを視覚的に示すSankeyダイアグラムなど、ユーザーフレンドリーな設計がLCA実務者の作業効率を大幅に向上させます。* 外部連携機能: Excelとの直接リンク機能や、COM APIを介してVisual Basic, C#, Java, PHPなどの言語で他のソフトウェアと接続できるため、LCAプロセスを自動化し、既存の社内システムとの連携も容易です。

充実したサポート体制

世界中にパートナー企業が存在し、各国で技術サポートやトレーニングが提供されています。日本国内にも代理店があり、日本語での手厚いサポートが受けられます。

・デメリット

1. 高い学習コスト

SimaProは高度な分析機能を持つため、LCAの専門知識に加え、ソフトウェアを使いこなすための一定の学習コストがかかります。特に初心者にとっては、初期の習得に時間と労力を要する可能性があります。

2. 高額なライセンス費用

グローバルスタンダードの高機能ソフトウェアであるため、ライセンス費用は比較的高額です。特に大規模な企業や専門家向けのプランでは、年間数百万円規模の費用が発生します。

3. データベースの追加費用

ecoinvent v3は標準搭載ですが、特定の産業に特化したデータベースや、より詳細な地域データを利用する場合には、別途ライセンス費用が発生することがあります。

3. 価格・ライセンス体系

SimaProのライセンスは、主に「ビジネス用」と「教育用」に分かれ、それぞれ機能や価格が異なります。

ビジネス用ライセンス(年間サブスクリプション)

ライセンス名 主な機能 年間費用目安(シングルユーザー)
Expert Plan 強力なモデリングと専門家向け機能、シナリオ分析、グループ分析、不確実性計算など 6,100ユーロ~ (約100万円~)
Power Plan Expert Planの全機能に加え、機密データの非表示、他ツールとの連携(COMインターフェース)、Excel・SQLデータベースへの直接リンクなど、最も包括的な機能 7,800ユーロ~ (約128万円~)

教育用ライセンス(年間サブスクリプション)

ライセンス名 主な機能 年間費用目安(シングルユーザー)
PhD Plan 包括的なLCA研究のための高度な機能、シナリオ分析、不確実性計算など 2,000ユーロ~ (約34万円~)
Faculty Plan LCA教育に最適化された機能、簡単なモデリング、インタラクティブな結果分析、CSVインポート/Excelエクスポート 3,000ユーロ~ (約51万円~)

※上記価格は目安であり、為替レート、地域、販売代理店、追加ユーザー数、サービス契約の有無によって変動する可能性があります。ecoinventデータベースのライセンス費用が含まれている場合がありますが、別途費用が発生するケースもあります。

4. 想定される利用者と活用シーン

SimaProは、その豊富な機能とグローバル対応力から、以下のような企業や研究機関に最適です。

・グローバルサプライチェーンを持つ大手製造業

製品の原材料調達から製造、流通、使用、廃棄に至るまで、国際的なサプライチェーン全体にわたる環境負荷を算定し、Scope 3排出量を高い精度で開示したい企業。

・LCAを本格的に実施する企業・コンサルタント

詳細かつ包括的なLCAを実施し、製品設計の改善、環境性能の最適化、EPD作成、国際的な環境報告に対応する専門家。

・学術研究機関

LCAに関する最先端の研究、国際比較研究、新しいLCA手法の開発などにおいて、その包括性とデータ品質から基盤データとして利用したい研究者。

・環境製品宣言(EPD)の作成を目指す企業

国際的なEPDプログラムに準拠した製品環境宣言を作成する際に、信頼性の高いLCIデータと高度な分析機能を活用したい企業。

・複数のシナリオを比較検討し、戦略的な意思決定を行いたい企業

感度分析やパラメーター分析、シナリオ分析機能を活用し、製品開発の初期段階から環境影響を考慮した設計(DfE: Design for Environment)を進めたい企業。

まとめ

SimaProは、世界標準のLCIデータベース、高度な分析機能、直感的な操作性を兼ね備えた、LCAソフトウェアのリーディングツールです。

感度分析や不確実性評価といった先進機能により、LCA結果の信頼性を高め、データに基づいた戦略的な意思決定を強力に支援します。高額なライセンス費用や学習コストは伴いますが、グローバルな環境規制への対応、製品の環境性能向上、そして企業の持続可能性向上を目指す上で、SimaProは非常に価値のある投資となるでしょう。


適切なLCA算定ツールの選定は、企業の環境負荷を正確に把握し、効果的な削減策を導き出すための第一歩です。

ALCAでは、LCAの専門家がお客様の目的や状況に合わせて、LCA算定ツールの選定のサポートをいたします。

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参考資料

SimaPro – LCAで持続可能な未来を共に - TCO2株式会社
https://www.tco2.com/softwares/simapro/

Life cycle assessment with SimaPro Craft
https://simapro.com/life-cycle-assessment/

価格 – LCAで持続可能な未来を共に - TCO2株式会社
https://www.tco2.com/software-items/price/

SimaPro LCA software for companies and consultancies
https://esu-services.ch/simapro/professional/

SimaPro Craft - 2-0 LCA
https://2-0-lca.com/tools/simapro/simapro-craft-products-and-licences/

Simaproの7つの特徴 – LCAで持続可能な未来を共に|TCO2株式会社
https://www.tco2.com/software-items/features/