はじめに
前回の記事「3-1 サステナビリティ情報開示体制の整備」では、SSBJ基準に対応するための社内体制の構築方法、担当部署の明確化、情報収集プロセスの確立、およびデータ管理の重要性について解説しました。
3-1:サステナビリティ情報開示体制の整備
今回は、その体制を実効性のあるものにするために不可欠な要素である、関連部署との連携と役割分担に焦点を当てます。
今回は、SSBJ基準に対応するための社内体制の構築方法、担当部署の明確化、情報収集プロセスの確立、およびデータ管理の重要性について詳しく解説します。
なぜ関連部署との連携が不可欠なのか
SSBJ基準が求めるサステナビリティ情報は、企業のあらゆる活動領域にまたがります。
温室効果ガス排出量、水資源利用、人権、サプライチェーン管理など、その内容は多岐にわたり、特定の部署だけで網羅的に情報を収集し、開示することは不可能です。
例えば、GHG排出量のデータは製造部門や施設管理部門から、人権に関する情報は人事部門や調達部門から、財務的影響の評価は経理部門から、といったように、多くの部署からの協力が不可欠です。
そのため、各部署がそれぞれの専門性を活かしつつ、共通の目標に向かって連携し、明確な役割分担のもとで情報共有を行うことが、SSBJ対応の成否を分ける鍵となります。
1. 経営層の役割とコミットメント
SSBJ対応を全社的に推進するためには、経営層の強力なリーダーシップとコミットメントが不可欠です。
| 方針決定と戦略策定 | 経営層は、サステナビリティを経営の重要課題として位置づけ、SSBJ対応に関する全社的な方針と戦略を決定します。これにより、各部署が共通の方向性を持って取り組むことができます。 |
|---|---|
| 責任体制の明確化 | サステナビリティ情報開示に関する最終的な責任者を明確にし、その責任者が各部署の連携を監督・推進する体制を構築します。 |
| リソースの配分 | SSBJ対応に必要な人的・物的リソース(予算、人員、システムなど)を適切に配分し、各部署が円滑に業務を遂行できる環境を整備します。 |
| 進捗の監督と評価 | 定期的に進捗状況をレビューし、必要に応じて戦略や計画を調整することで、実効性のある対応を継続的に推進します。経営層が積極的に関与することで、各部署のモチベーション向上にも繋がります。 |
2. 各部門の具体的な役割と連携
SSBJ対応においては、各部門がそれぞれの専門性を活かし、密接に連携することが求められます。
経理部門
役割:サステナビリティ関連の財務的影響の評価、財務情報との連携、開示情報の信頼性確保(内部統制の構築支援、監査対応)。
連携:サステナビリティ推進部門と連携し、気候関連のリスクと機会が企業の財務状況に与える影響を分析します。また、IR部門と連携し、財務情報とサステナビリティ情報の一貫性のある開示を支援します。
IR部門
役割:投資家やその他のステークホルダーへのサステナビリティ情報開示、対話(エンゲージメント)の実施、開示情報の表現方法の検討。
連携:サステナビリティ推進部門から提供される情報を基に、投資家が理解しやすい開示資料を作成します。経営層と連携し、投資家へのメッセージング戦略を策定します。
事業部門(製造、開発、営業など)
役割:GHG排出量(Scope1, 2)のデータ収集、水使用量や廃棄物発生量などの環境データ収集、製品・サービスのサステナビリティ関連情報提供、サプライチェーンにおけるサステナビリティ課題への対応。
連携:サステナビリティ推進部門と連携し、必要なデータを正確かつタイムリーに提供します。開発部門は、環境負荷の低い製品開発や新技術導入に関する情報を提供し、営業部門は顧客からのサステナビリティに関する要望を共有します。
人事部門
役割:従業員の多様性、労働安全衛生、人権に関する情報収集と管理、人材育成を通じたサステナビリティ意識の向上。
連携:サステナビリティ推進部門と連携し、人権デューデリジェンスの実施状況や従業員エンゲージメントに関するデータを提供します。
法務・コンプライアンス部門
役割:サステナビリティ関連の法規制遵守、開示情報の法的リスク評価、契約におけるサステナビリティ条項の検討。
連携:サステナビリティ推進部門と連携し、開示内容が法規制に準拠しているかを確認し、法的リスクを評価します。
3. 円滑な情報共有と連携の進め方
多岐にわたる部署が関わるSSBJ対応において、円滑な情報共有と連携は極めて重要です。
定期的な会議体の設置
サステナビリティ推進委員会:各部署の代表者が参加する横断的な委員会を設置し、SSBJ対応の進捗状況の共有、課題の特定、解決策の検討を行います。
実務者レベルの定例会:データ収集担当者や情報作成担当者など、実務レベルでの定期的な会議を設定し、具体的な課題解決や情報連携を密に行います。
情報共有プラットフォームの活用
共通のデータ管理システム:サステナビリティ関連のデータを一元的に管理できるシステムを導入し、各部署が必要な情報にアクセスできる環境を整備します。
社内ポータルサイト:SSBJ基準に関する情報、社内ガイドライン、Q&Aなどを掲載し、全従業員がいつでも情報にアクセスできるようにします。
共通認識の醸成と研修
全社的な意識向上:SSBJ対応の重要性や目的について、全従業員が共通認識を持てるよう、社内研修や説明会を定期的に実施します。
専門知識の習得:各部署の担当者に対し、SSBJ基準や関連するサステナビリティ課題に関する専門知識を習得するための研修機会を提供します。
まとめ
SSBJ対応を成功させるためには、経営層の強力なリーダーシップのもと、経理部門、IR部門、事業部門など、関連するすべての部署が密接に連携し、それぞれの役割を果たすことが不可欠です。
定期的な会議体の設置や情報共有プラットフォームの活用を通じて、円滑な情報共有を促進し、全社的な共通認識を醸成することが、SSBJ基準に基づく透明性の高いサステナビリティ情報開示を実現する鍵となります。
今回は、SSBJ対応における関連部署との連携と役割分担について解説しました。
次回の記事では、「3-3 外部専門家との協業の進め方」として、SSBJ対応において外部の専門家(コンサルタント、監査法人など)とどのように連携し、彼らの専門知識を最大限に活用するか、また第三者保証の重要性について解説します。
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参考資料
SSBJ サステナビリティ基準委員会 Webサイト
https://www.ssb-j.jp/jp/
SSBJ サステナビリティ基準委員会 サステナビリティ基準委員会(SSBJ)
https://www.ssb-j.jp/jp/list-ssbj_2.html
IFRS Foundation
https://www.ifrs.org/
International Sustainability Standards Board - IFRS Foundation
https://www.ifrs.org/groups/international-sustainability-standards-board/
金融庁 金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/sustainability_disclose_wg/sustainability_disclose_wg_index.html
GHG Protocol. Standards & Guidance.
https://ghgprotocol.org/standards-guidance
GHG Protocol. Corporate Standard.
https://ghgprotocol.org/corporate-standard
GHG Protocol. The Greenhouse Gas Protocol: A Corporate Accounting and Reporting Standard (Revised Edition).
https://ghgprotocol.org/sites/default/files/standards/ghg-protocol-revised.pdf