はじめに

これまでの節で、カーボンフットプリント(CFP)の基本的な概念と、デジタルプロダクトパスポート(DPP)におけるその重要な位置づけについて解説しました。

第5章:カーボンフットプリント(CFP)とDPPの連携

5-2:DPPにおけるCFP情報の位置づけ


DPPが製品の「デジタル履歴書」として機能し、ライフサイクル全体にわたる持続可能性情報を開示する上で、CFP情報は極めて重要な要素です。

しかし、単にCFP情報を提供するだけでなく、その算定が正確で信頼できるものであることが、DPP全体の価値を大きく左右します。

本記事では、正確なCFP算定がDPPを通じて開示される製品情報の客観性と信頼性をどのように担保し、企業の環境パフォーマンスに対する評価を高めるのかを、分かりやすく解説します。

DPPの信頼性におけるCFP算定の役割

DPPは、製品の持続可能性に関する多様な情報を一元的に提供することで、その透明性を高めます。

しかし、情報が多ければ多いほど、その情報の「質」が問われることになります。ここでCFP算定が果たす役割は、DPPの信頼性を高める上で非常に重要です。

1. 客観的な環境性能の指標

CFPは、製品のライフサイクル全体で排出される温室効果ガス量をCO2換算で数値化するため、製品の環境性能を客観的かつ定量的に示す指標となります。

例えば、「環境に優しい」という抽象的な表現ではなく、「この製品のCFPは〇〇kg-CO2です」と具体的に示すことで、情報の信頼性が格段に向上します。

2. 国際標準に基づく算定

CFP算定は、ISO 14067やGHGプロトコルなどの国際的な標準に準拠して行われます。これらの標準は、算定の透明性、正確性、一貫性を確保するための厳格なガイドラインを提供しています。

国際標準に準拠したCFP算定結果をDPPで開示することで、世界中のステークホルダーがその情報を信頼し、比較検討できるようになります。

3. 第三者検証による信頼性担保

CFP算定結果は、内部検証だけでなく、第三者検証機関による客観的な検証を受けることが望ましいとされています。

第三者検証は、算定方法の妥当性、データの正確性、そして国際標準への準拠を確認することで、DPPを通じて開示されるCFP情報の信頼性を強力に担保します。これは、消費者や取引先、投資家に対して、企業が環境情報開示に真摯に取り組んでいることを示す重要な証拠となります。

CFP算定が企業の環境パフォーマンス評価を高める理由

正確なCFP算定に基づいたDPPの導入は、企業の環境パフォーマンス評価を向上させ、持続可能な経営における競争優位性を確立する上で不可欠です。

1. ESG評価の向上

投資家は、企業の将来性を判断する上でESG(環境・社会・ガバナンス)を重視しており、GHG排出量の開示は重要な評価基準の一つです。

DPPを通じて、透明性のあるCFP情報を提供することで、企業のESG評価が向上し、サステナブル投資の対象として選ばれやすくなります。これは、資金調達コストの低減や投資家層の拡大に直結する戦略的メリットとなります。

2. ブランドイメージの向上と市場での差別化

環境意識の高い消費者は、CFP情報を基に環境負荷の低い製品を積極的に選択します。

DPPで正確なCFP情報を開示し、自社製品の優れた環境性能をアピールすることで、企業のブランドイメージが向上し、競合他社との差別化を図ることができます。これは、新たな顧客獲得や市場シェア拡大に繋がります。

3. サプライチェーン全体の改善:

CFP算定は、サプライチェーン全体における排出量の多いプロセス(ボトルネック)を特定し、削減策を講じるための具体的なデータを提供します。

DPPを通じてサプライヤーとCFP情報を共有し、協働することで、サプライチェーン全体の環境パフォーマンスを向上させ、持続可能な調達を促進できます。これは、企業のレジリエンス(強靭性)を高めることにも繋がります。

CFP算定の課題とDPPによる解決

CFP算定には、サプライチェーン全体からのデータ収集の困難さや、算定の精度・信頼性の確保といった課題が伴います。DPPは、これらの課題を解決し、CFP算定の実効性を高める上で重要な役割を担います。

データ収集の効率化 DPPは、製品に付与されたデジタル識別子を通じて、製品ライフサイクル全体にわたる情報をデジタルで一元管理します。これにより、サプライチェーン全体からのCFP関連データの収集が効率化され、算定の負荷が軽減されます。
情報の信頼性確保 DPPは、ブロックチェーン技術などの分散型台帳技術を活用することで、一度記録された情報の改ざんが困難であるという特性を持ちます。これにより、CFP情報の信頼性が担保され、不正な情報開示のリスクが低減されます。
相互運用性の確保 DPPは、国際標準に準拠したデータフォーマットと、データスペースのような連携基盤を通じて、異なるシステム間でのCFP情報の相互運用性を確保します。これにより、サプライチェーン全体でのCFPデータ交換が円滑に行えるようになります。

まとめ

正確なカーボンフットプリント(CFP)算定は、デジタルプロダクトパスポート(DPP)を通じて開示される製品情報の客観性と信頼性を強力に担保し、企業の環境パフォーマンスに対する評価を飛躍的に高めます。

国際標準に準拠した算定と第三者検証は、DPPの価値を最大化し、ESG評価の向上、ブランドイメージの強化、そしてサプライチェーン全体の改善へと繋がります。

DPPは、CFP算定の課題を解決し、その実効性を高める上で不可欠なツールであり、企業はこれを戦略的に活用することで、持続可能な社会におけるリーダーとしての地位を確立できるでしょう。

今回はCFP算定がDPPの信頼性を高める理由について解説しました。お気軽にお問い合わせください。


DPP・CFPに関する具体的なご相談やご興味がございましたら、ぜひALCAにお問い合わせください。貴社の状況に合わせた最適なサポートを提供します。

CONTACT

CFPに関するご相談はこちら

貴社の状況に合わせた最適なサポートを提供します。

参考資料

2-1. カーボンフットプリント(CFP)- CO₂排出量評価の基本
https://alca-lca.com/magazine/lca/2-1-cfp-carbon-footprint-basics

6-2. グリーン調達法、デジタル製品パスポート(DPP)、建築物LCAなどの最新動向
https://alca-lca.com/magazine/lca/6-2-green-procurement-dpp-wlc