はじめに

前節では、ESPRとDPPが企業の製品戦略に抜本的な変革を迫っていることを解説しました。

第6章:持続可能な製品戦略とCFP算定の重要性

6-1:ESPR時代における製品戦略の再構築


この変革の中心にあるのが、製品のライフサイクル全体における温室効果ガス排出量を定量化する「カーボンフットプリント(CFP)」の算定です。

CFP算定は、単なる環境規制への対応に留まらず、企業経営に多岐にわたるメリットをもたらす戦略的なツールとなり得ます。

コスト削減、リスク管理の強化、投資家からの評価向上、そしてイノベーションの促進といった具体的な経営上のメリットは、持続可能な成長を目指す企業にとって不可欠な要素です。

本記事では、CFP算定が企業にもたらす経営上のメリットについて、分かりやすく解説します。

コスト削減とリスク管理の強化

CFP算定は、製品のライフサイクル全体における排出源を「見える化」することで、企業が効率的なコスト削減とリスク管理を行うための基盤を提供します。

1. エネルギー効率向上と資源使用量削減によるコスト削減

CFP算定を通じて、製品の製造、輸送、使用といった各段階で最も多くの温室効果ガスが排出されているプロセスを特定できます。

これにより、エネルギー効率の悪い設備や工程を改善したり、再生可能エネルギーの導入を検討したりすることで、エネルギーコストを削減できます。

原材料の最適化や廃棄物の削減も、CFP算定によって推進され、資源使用量の効率化とコスト削減に繋がります。

2. サプライチェーンにおける環境リスクの早期特定と低減

CFP算定は、サプライチェーン全体における環境負荷の高い原材料や部品、あるいは排出量の多いサプライヤーを特定するのに役立ちます。

DPPと連携することで、サプライヤーからのCFP情報を収集し、環境リスクの高い調達先を特定・排除することで、ブランドイメージの毀損や法的リスクを回避できます。

製品に欠陥が見つかった際にも、DPPのCFP情報を含んだトレーサビリティデータを活用することで、製造履歴や流通経路を即座に追跡し、迅速な原因究明と対応が可能となります。

3. 規制遵守による罰則回避

欧州電池規則やCBAM(炭素国境調整措置)、ESPRなど、EUではCFPの開示や特定の排出量基準への適合を義務付ける規制が強化されています。

正確なCFP算定とDPPを通じた情報開示は、これらの規制への効率的な遵守を可能にし、罰金やEU市場からの排除といったリスクを回避します。

投資家からの評価向上とイノベーション促進

CFP算定は、企業の透明性を高め、外部からの評価を向上させるだけでなく、新たなイノベーションを促進する機会も提供します。

1. 透明性の高いCFP情報開示によるESG評価の向上

投資家は、企業の将来性や持続可能性を評価する上で、ESG(環境・社会・ガバナンス)情報を重視しています。CFPは、企業の環境パフォーマンスを客観的かつ定量的に示す重要な指標です。

DPPを通じて、国際標準(ISO 14067、GHGプロトコルなど)に準拠した信頼性の高いCFP情報を開示することで、企業のESG評価が向上し、サステナブル投資の対象として選ばれやすくなります。これは、資金調達コストの低減や投資家層の拡大に直結する戦略的メリットとなります。

2. 環境意識の高い消費者へのアピールとブランド価値向上:

消費者の環境意識が高まる中、CFPは製品を選ぶ際の重要な判断材料となります。DPPでCFP情報を公開することで、環境負荷の低い製品であることを明確にアピールし、環境意識の高い消費者から選ばれるブランドへと成長できます。

企業のサステナビリティへの真摯な取り組みが客観的なデータで裏付けられることで、ブランドイメージが向上し、競合他社との差別化を図ることができます。

3. CFPデータを活用したイノベーション促進

CFP算定のプロセスで得られる詳細なデータは、製品設計の改善、低炭素素材の開発、エネルギー効率の高い製造プロセスの導入など、多岐にわたるイノベーションを促進します。

排出量の多いプロセスを特定し、そこに改善策を集中することで、より効果的にCO2排出量を削減する技術や製品を開発できます。これは、企業の技術力を高め、新たな市場ニーズに応える製品を生み出す源泉となります。

まとめ

カーボンフットプリント(CFP)算定は、企業経営に多大なメリットをもたらす戦略的なツールです。

排出源の特定によるエネルギー効率向上や資源使用量削減によるコスト削減、サプライチェーンにおける環境リスクの早期特定と低減、そして規制遵守による罰則回避は、企業の安定した経営基盤を築きます。

さらに、透明性の高いCFP情報開示によるESG評価の向上、ブランド価値の向上、そしてCFPデータを活用したイノベーションの促進は、企業の持続可能な成長と競争優位性の確立に貢献します。

DPPの導入が進む中で、CFP算定は企業にとって不可欠な経営戦略の一つとなるでしょう。

今回はCFP算定がもたらす経営上のメリットについて解説しました。次節では、ESPRとDPPが求める高度な情報開示に対応し、持続可能な製品戦略を成功させるために、専門的なカーボンフットプリント算定サービスをいかに活用すべきかを提案します。


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参考資料

カーボンフットプリント (CFP) 算定ガイドライン - 広島県
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/642078.pdf

デジタル製品パスポートによるサステナビリティのシステム化
https://kpmg.com/jp/ja/home/insights/2025/11/eu-regulation-dpp.html

カーボンフットプリント(CFP)とは?企業の取組事例や算定方法 ...
https://ba.intertek-jpn.com/column/about-cfp/

カーボンフットプリント(CFP)算定に向けた支援
https://www.dnv.jp/services/cfp_carbon_footprint_verification/

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