はじめに
前回の記事(2.1)では、企業が直接管理する排出源からの温室効果ガス(GHG)排出である「Scope1」について解説しました。
2.1:Scope1とは:自社の直接排出
しかし、企業の排出量はそれだけではありません。多くの企業活動において不可欠な「電気」の使用も、GHG排出に繋がっています。
本記事では、他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接的な排出である「Scope2」に焦点を当て、それが何を指すのか、そして購入した電力がどのようにGHG排出に繋がるのか、その仕組みを詳しく解説します。
Scope2とは? 購入したエネルギーに伴う間接排出
Scope2排出量とは、事業者自らが消費する、他社から供給された電気、熱、蒸気、または冷熱の生産に伴う間接的な温室効果ガス排出量を指します。
これは、自社の敷地内で燃料を燃焼させるScope1とは異なり、エネルギーが生産される場所(例:発電所)で排出が発生するため、「間接排出」と分類されます。
GHGプロトコルでは、Scope2排出量を算定する際に、以下の2つのアプローチを推奨しています。
| 算定アプローチ | 概要 |
|---|---|
| ロケーション基準 | 企業が事業活動を行う地理的な場所(グリッド)における電力系統全体の平均排出係数を用いて算定する方法。電力の供給元や契約内容に関わらず、地域全体の平均的な排出強度を反映します。 |
| 移動燃焼 | 自社が所有または管理する車両(社用車、トラック、フォークリフトなど)や船舶、航空機などで燃料を燃焼させることによって発生する排出。 |
| マーケット基準 | 企業が購入した電力の供給契約や、再生可能エネルギー証書(RECs)などの属性情報に基づいて算定する方法。再生可能エネルギーの購入など、企業の具体的な調達選択を反映します。 |
企業は、これらの両方のアプローチを用いてScope2排出量を算定し、報告することが求められます。
これにより、電力系統全体の排出状況と、企業自身の電力調達選択による排出量の両面を評価することが可能になります。
購入した電力がGHG排出に繋がる仕組み
企業が購入する電気は、多くの場合、発電所で化石燃料(石炭、天然ガス、石油など)を燃焼させることによって生産されています。
この燃焼プロセスにおいて、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスが大気中に排出されます。
企業が電気を使用するということは、その電気を生産するために発電所が稼働し、GHGを排出していることになります。
たとえ自社で燃料を燃やしていなくても、電気の消費を通じて間接的にGHG排出に貢献していると見なされるため、Scope2として算定の対象となるのです。
例えば、ある企業がオフィスビルで使用する電力を電力会社から購入しているとします。
この電力会社が火力発電を主な電源としている場合、企業が消費する電気の量に応じて、その火力発電所から排出されるGHGの一部が、その企業のScope2排出量として計上されます。
再生可能エネルギー由来の電力を購入している場合は、その排出係数が低くなるため、Scope2排出量を削減することができます。
その他のScope2エネルギー源
電気以外にも、他社から供給される以下のエネルギー源もScope2排出量の対象となります。
熱:地域熱供給システムなどから供給される熱エネルギー。
蒸気:工業団地などで集中して生産され、各工場に供給される蒸気。
冷熱:地域冷暖房システムなどから供給される冷熱エネルギー。
これらのエネルギーも、生産過程でGHGが排出されるため、企業が消費する量に応じてScope2排出量として算定されます。
Scope2排出量を把握する重要性
Scope2排出量を正確に把握し管理することは、企業にとって以下の点で極めて重要です。
排出量削減の大きな機会:多くの企業にとって、Scope2排出量は総排出量の大きな割合を占めることがあります。再生可能エネルギーへの切り替えや省エネルギー対策は、効果的な排出削減に繋がります。
ステークホルダーからの要求:投資家や顧客は、企業の再生可能エネルギー導入状況や脱炭素への取り組みを重視しています。Scope2排出量の適切な管理と情報開示は、企業のESG評価向上に貢献します。
エネルギーコストの管理:電力消費量の削減や効率的なエネルギー調達は、エネルギーコストの削減にも繋がります。
脱炭素社会への貢献:再生可能エネルギーの導入を促進することは、電力系統全体の脱炭素化に貢献し、持続可能な社会の実現に寄与します。
まとめ
Scope2排出量とは、企業が他社から購入・消費する電気、熱、蒸気、冷熱の生産に伴う間接的な温室効果ガス排出量を指します。
購入した電気は、その発電過程で化石燃料が燃焼されることによりGHGが排出されるため、企業は間接的に排出に貢献していると見なされます。
Scope2排出量の算定には、ロケーション基準とマーケット基準の2つのアプローチがあり、両方で報告することが推奨されています。
Scope2排出量の適切な管理は、企業の排出削減、ESG評価向上、コスト削減、そして脱炭素社会への貢献において極めて重要です。
今回はScope2:電気の使用に伴う間接排出について解説しました。
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参考資料
GHG Protocol. Standards & Guidance.
https://ghgprotocol.org/standards-guidance
GHG Protocol. Corporate Standard.
https://ghgprotocol.org/corporate-standard
GHG Protocol. The Greenhouse Gas Protocol: A Corporate
Accounting and Reporting Standard (Revised Edition).
https://ghgprotocol.org/sites/default/files/standards/ghg-protocol-revised.pdf
GHG Protocol. Scope 2 Guidance.
https://ghgprotocol.org/scope_2_guidance