はじめに

GX-ETSは、「GXリーグ」に参加する企業が任意で参加する制度として位置づけられています。

しかし、その実態は任意ではなく「準強制的な規制制度」とも言える性質を持ちます。特に対象企業(特に大規模排出事業者)は、報告義務・検証義務を含む一連の制度的要請を確実に履行することが求められています。

本記事では、GX-ETSにおける制度対象企業に課される義務の中身と、その「実質的な規制」としての側面を整理しながら解説します。

GX-ETSにおける「義務」の全体像:任意制度に見えて義務がある

GX-ETSは参加自体が任意であるため、しばしば「柔軟な枠組み」と誤解されがちです。

しかし、一度参加を決めた企業(特にGroup G=大規模排出事業者)は、以下のような明確な義務を負います:

・削減目標の設定(2030年、2025年、2023-25年累計)

・排出量の算定と報告(毎年10月末まで)

・第三者検証(Group Gでは必須)

・未達時の理由説明またはクレジット調達

・GXダッシュボードでの情報開示

これらは企業の裁量ではなく、制度として定められた義務項目であり、事実上の規制的な性格を持ちます。

義務内容の詳細:報告・検証・開示が柱

1 排出削減目標と基準年度の設定

すべての対象企業は、基準年度排出量と削減目標(2030・2025・2023〜25年累計)を設定する必要があります。
これがGX-ETSでの削減努力の基礎になります。

2 排出量の算定・報告

排出量は毎年度(4月〜翌年3月)にわたり算定され、その結果を10月末までに報告します。
対象となるのはScope1(直接排出)およびScope2(間接排出)です。

3 第三者検証(Verification)

大規模排出企業(Group G)においては、限定的保証レベルでの第三者検証が義務付けられています。
中小規模のGroup Xでは任意ですが、信頼性や対外的説明力を高める観点から、多くの企業が導入を検討しています。

義務を踏まえたインセンティブ構造とリスク管理

GX-ETSでは、削減目標に達しなかった場合、以下の対応が求められます:

・超過削減枠やJ-クレジット等を市場で調達

・または未達理由の提出と説明責任

反対に、目標を超えて排出削減ができた場合には、Group Gであれば超過削減枠の創出・販売が可能です。
これは将来的な経済的インセンティブにつながる可能性があり、投資対効果のある「制度内報酬」とも言えます。

Group GとGroup Xの違い

義務項目 Group G(大規模) Group X(中小)
削減目標の設定 必須 必須
排出量の算定・報告 必須 必須
第三者検証 必須 任意
超過削減枠の創出・販売 可能 不可
クレジットの取得・使用 任意(推奨) 任意(推奨)
ダッシュボードでの開示 必須 必須

まとめ:GX-ETSは「任意参加の規制制度」

GX-ETSは、企業の自発的な削減行動を促す制度として始まりましたが、その実態は報告義務・検証義務・説明責任をともなう制度的な“規制”に近いと言えます。

特に、GXリーグに参加し、制度対象となった企業は、その社会的責任や投資家・取引先からの期待にも応えるため、コンプライアンス意識を持った制度対応が不可欠です。

次回(2-2)では、「では実際に、どの企業がこの制度の対象になっているのか?」について、参加基準や判断のポイントを整理して解説します。

参考URL

経済産業省「GXリーグ公式サイト:排出量取引制度(GX-ETS)」
https://gx-league.go.jp/action/gxets/

経済産業省「GXリーグ公式サイト:算定・モニタリング・報告ガイドライン」
https://gx-league.go.jp/rules/monitoring/