はじめに

GX-ETS(成長志向型排出量取引制度)は、すべての企業が対象ではなく、GXリーグへの参加および排出量や業種など一定の基準を満たす企業が制度の枠内に入ります。

今回は、初心者や企業担当者向けに「誰が対象になるのか」をわかりやすく整理していきます。

GXリーグ参加が前提

まず前提として、GX‑ETSに参加するにはGXリーグへの参加が必要です。
GXリーグは政府・企業・金融機関などが連携し、GX(グリーントランスフォーメーション)を推進する枠組みで、公募により企業も参画します。その中でも、

・気候関連目標の設定

・排出量の算定・報告

・進捗の情報開示

など、一定の準備を整える企業が参加要件として求められます。
これが、制度に関与する最初の扉です。

排出量に応じた企業分類:Group G / Group X

参画企業は、2021年度のスコープ1排出量(直接排出)に基づき、2つのグループに分けられます:

区分 基準(スコープ1) 主な要件・特徴
Group G 10万t-CO₂以上 第三者検証必須、超過削減枠の創出・取引が可能
Group X 10万t-CO₂未満 目標設定・報告は必須、検証・取引は任意

※この10万t基準は、第1フェーズなどの実施状況に応じて定められており、2026年度以降の本格施行でも同様に設定される見通しです(経済産業省「GX-ETSフェーズ1ルール」資料より)。

対象業種の傾向

GX-ETSは、主にCO₂排出が大きいエネルギー集約型業種の企業が中心ですが、試行段階で徐々に広がりを見せています:

業種 2023年度参画率 2024年度参画率
鉄鋼業 97 % → 98 % 98 %
化学工業 77 % → 81 % 81 %
石油製品製造 87 % → 91 % 91 %
パルプ・紙 93 % → 95 % 95 %
電子部品製造 89 % → 89 % 89 %
電力・ガス 77 % → 81 % 81 %
航空輸送 0 % → 100 % 100 %
鉄道輸送 47 % → 50 % 50 %
道路貨物輸送 18 % → 86 % 86 %

(経済産業省「GXリーグ2024年度 新規参画企業一覧」より)

電力・鉄鋼・化学・パルプ・電子部品・輸送関連など、多くの業種で高い参画率が確認されています。

参画条件とルール整理

言い換えれば、GX-ETSの現時点での参加条件は以下の通りです:

1. GXリーグへの参加

2. スコープ1の排出量が年間10万t以上(Group G)またはそれ以下(Group X)

3. 業種的に対象範囲に含まれること

4. 排出量の算定・報告・目標設定などを制度に準じて実行すること

条件 Group G Group X
GXリーグ参加 必須 必須
排出量(スコープ1) ≥10万t-CO₂ <10万t-CO₂
排出量算定・報告 要件通り実施 要件通り実施
第三者検証 必須 任意
超過枠創出・取引 可能 不可
中長期目標設定 必須 必須

企業が備えるべき視点

・排出量の正確な把握:単年度だけでなく、過去年度との比較や複数拠点合算が重要

・自社排出量が10万t近辺かどうかの確認が急務。超過すればGroup G入りの可能性あり

・業界参画率の高い業種(鉄鋼・電力・化学など)は競合企業の動向にも注意

・GXリーグ参加と排出算定体制の早期構築:登録から継続対応の流れを確立する必要あり

今後の展望

2026年度以降、年間スコープ1排出量10万t以上の企業に対してGX-ETSの参加が義務化される方向で制度整備が進行中です。(2025年6月現在、経済産業省GX関連報告より)

これにより、参加企業数は300〜400社に拡大する見込みで、親会社と子会社をまとめて判断する制度設計も見込まれています。

将来的には排出枠のオークション導入や価格安定メカニズムなども検討され、制度は段階的に強化される方向です。

中小排出事業者もスコープ1が10万tに達すれば対象入りするため、「今後の拡大対象に該当するか」を今のうちから意識することが求められます。

次回予告

ここまで、GX-ETSの現時点での対象要件(GXリーグ参加、排出量基準、業種傾向など)を整理しました。

次回(2-3)では「自社は対応すべきか?」をテーマに、排出量・業種・事業構造に基づいて対応判断のポイントを紹介します。

参考資料

経済産業省「GXリーグ公式サイト:排出量取引制度(GX-ETS)」
排出量取引制度(GX-ETS) | GXリーグ公式WEBサイト

内閣官房GX実行会議資料「GX実行に向けた基本方針」
GX実行会議|内閣官房ホームページ