はじめに

近年、地球温暖化や資源枯渇といった環境問題への関心が高まる中、企業活動においても環境負荷の低減が喫緊の課題となっています。特に、製品やサービスが環境に与える影響を正確に把握し、改善していくための評価手法が注目されています。

今回は、環境負荷評価の分野でよく耳にする「LCA」「CFP」「LCCO2」という3つの言葉について、それぞれの意味と違いを初心者の方にも分かりやすく解説します。

1. LCA(ライフサイクルアセスメント)とは?

LCA(Life Cycle Assessment:ライフサイクルアセスメント)は、製品やサービスが「ゆりかごから墓場まで」の全ライフサイクルにわたって、環境に与える影響を総合的に評価する手法です。具体的には、以下の各段階で発生する環境負荷を定量的に把握し、分析します。

原材料の調達:資源の採掘、加工など

製造:工場での生産、エネルギー消費など

輸送:原材料や製品の運搬など

使用:製品の利用、メンテナンスなど

廃棄・リサイクル:最終処分、再資源化など

LCAの大きな特徴は、CO2排出量だけでなく、水質汚染、大気汚染、資源枯渇、生態系への影響など、多岐にわたる環境負荷項目を評価対象とすることです。これにより、ある環境負荷を減らしても、別の環境負荷が増えてしまうといった「トレードオフ」の関係を把握し、より本質的な環境改善策を検討することができます。

LCAはISO(国際標準化機構)によって国際規格が定められており、信頼性の高い評価手法として広く活用されています。

LCAのライフサイクルステージ

【図:LCAのライフサイクルステージ】

2. CFP(カーボンフットプリント)とは?

CFP(Carbon Footprint of Product:ライフサイクルフットプリント)は、LCAの考え方をベースに、特定の環境負荷に焦点を当てて評価する指標の総称です。

「フットプリント(足跡)」という言葉が示すように、製品やサービスが環境に残す「足跡」を数値化し、可視化することを目的としています。LCAが多角的な環境影響を総合的に評価するのに対し、CFPは特定の環境側面を深掘りして評価する際に用いられます。

CFPはGHG排出量を対象にしたフットプリントですが、他にも代表的なものとしては、以下のようなものがあります。

カーボンフットプリント(CFP):温室効果ガス排出量に特化

ウォーターフットプリント::水資源の使用量に特化

エコロジカルフットプリント:生態系への影響に特化

このように、CFP等は特定の環境課題に焦点を当てることで、より具体的な削減目標の設定や、消費者への分かりやすい情報提供に役立ちます。

3. LCCO2(ライフサイクルCO2)とは?

LCCO2(Life Cycle CO2:ライフサイクルCO2)は、製品やサービスのライフサイクル全体で排出される二酸化炭素(CO2)の総量を指します。これは、「カーボンフットプリント(CFP)」とほぼ同義、またはその具体的な指標として使われることが多いです。

CFPは、二酸化炭素だけでなく、メタンや亜酸化窒素などの他の温室効果ガスもCO2に換算して合計した排出量を表します。LCCO2(またはCFP)は、気候変動対策において特に重要な指標であり、企業が自社の製品やサービスの脱炭素化を進める上で不可欠な情報となります。排出量を定量的に把握することで、どこで、どれくらいのCO2が排出されているのかを特定し、効果的な削減策を講じることが可能になります。

4. LCA、CFP、LCCO2の関係性と違い

これら3つの概念は密接に関連していますが、評価の範囲と対象に違いがあります。

項目 LCA(ライフサイクルアセスメント) CFP(カーボンフットプリント) LCCO2(ライフサイクルCO2)
評価範囲 製品・サービスの全ライフサイクル 製品・サービスの全ライフサイクル 製品・サービスの全ライフサイクル
評価対象 多様な環境負荷(CO2、水、資源、廃棄物など) CO2排出量(温室効果ガスをCO2換算)のみ CO2排出量(温室効果ガスをCO2換算)のみ
目的 総合的な環境影響の把握、改善点の特定 特定の環境負荷の可視化、削減目標設定 CO2排出量の可視化、削減目標設定
代表例 ISO 14040シリーズ ISO14067シリーズ カーボンフットプリント(CO2換算)

まとめると:

LCAは、最も広範な環境影響評価手法であり、様々な環境負荷を総合的に評価します。

CFPは、LCAの考え方を応用し、特定の環境負荷(例:CFPはCO2)に特化して評価する概念です。

LCCO2は、CFPの一種であり、特にCO2排出量に焦点を当てた具体的な指標です。カーボンフットプリント(CFP)とほぼ同義で使われます。

お問い合わせ

LCA、CFP、LCCO2は、それぞれ異なる視点から製品やサービスの環境負荷を評価するための重要なツールです。これらの概念を正しく理解し、適切に活用することで、企業は自社の環境パフォーマンスを向上させ、持続可能な社会の実現に貢献することができます。

環境負荷を正確に把握することは、効果的な削減目標の設定や、サプライチェーン全体の最適化、さらには新たなビジネスチャンスの創出にもつながります。

自社の製品やサービスの環境負荷を評価したい、具体的な削減策を知りたいといったご要望がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。弊社の専門家が、貴社の状況に合わせた最適なソリューションをご提案いたします。

CONTACT

環境負荷の算定・お見積もりのご相談はこちら

最適な進め方をご提案します。まずは要件をお聞かせください。