はじめに
本記事では、「LCA算定は外注/委託できるのか?」という疑問にお答えし、外部の専門機関に依頼する際の選び方、費用相場、注意点までを分かりやすく解説します。
なぜ今LCAが求められるのか
近年、LCAの重要性が急速に高まっています。その背景には、以下のような要因があります。
・規制・制度の強化
各国でカーボンフットプリント(CFP)の開示要求や、欧州のデジタル製品パスポート(DPP)など、LCAに基づいた情報開示を求める動きが活発化しています。
・サプライチェーンからの要請
大手企業がサプライヤーに対して、部品や原材料のGHG(温室効果ガス)排出量データの提出を求めるケースが増えています。
・企業の競争力強化
LCAを通じて製品の環境性能をアピールすることが、顧客や投資家からの評価を高め、ブランドイメージの向上につながります。
LCA算定を自社で進める際の課題
LCAを自社だけで算定しようとすると以下のような壁に直面します。
・データ収集の煩雑さ
LCA算定には、自社の製造工程だけでなく、サプライチェーン全体にわたる膨大なデータ(原材料のエネルギー消費量、輸送距離、廃棄量など)が必要です。これらのデータを正確に収集・管理するのは非常に手間がかかります。
・専門知識の必要性
算定には、ISO 14040/14044といった国際規格への準拠や、算定ルールの深い理解が不可欠です。また、算定結果を正しく解釈し、改善につなげる分析力も求められます。
LCA算定を外部委託する企業が増えている理由
上記のような課題から、多くの企業はLCA算定を専門的な知見を持つコンサルタントや第三者機関に外注しています。 外注することで以下のようなメリットを得ることができます。
区分 | |
---|---|
専門性・客観性の担保 | 専門家による正確な算定と、客観的な視点からの評価が期待できます。 |
リソースの効率化 | データ収集や分析にかかる社内リソースを削減し、本来の業務に集中できます。 |
最新動向への対応 | 目まぐるしく変わる国内外の規制や基準に関する最新情報を得られます。 |
LCA算定のパートナー選びで失敗しないための3つのポイント
信頼できるパートナーを選ぶことは、LCAを成功させるための鍵となります。算定を依頼する際には、特に以下の3つのポイントを確認しましょう。
・国際規格(ISO)への準拠と目的への適合性
LCA算定の結果を取引先への報告や規制対応に用いる場合、その信頼性の担保は不可欠です。国際規格である「ISO 14040」および「ISO 14044」に準拠した算定プロセスを実施できるか、必ず確認しましょう。
また、「何のためにLCAを算定するのか」という目的によって、委託先に求めるべき専門性は異なります。例えば、製品改善が目的なら分析力や提案力が、マーケティングでの活用が目的ならエコラベル取得支援の実績が重要になります。自社の目的に合った強みを持つ委託先を選ぶことが重要です。
・カーボンフットプリント(CFP)算定への対応力
LCAで評価する多様な環境影響の中でも、特に注目されるのが「地球温暖化」への影響です。この影響をCO₂排出量に換算して示す指標が「カーボンフットプリント(CFP)」であり、多くの企業にとって最優先課題となっています。
そのため、CFP算定に精通しているかは重要な選定基準です。また、CFPを活用したEPDの取得支援や、類似制度であるサプライチェーン排出量(スコープ3)算定の実施可否があるかどうかも確認するとよいでしょう。
・第三者検証を見据えた質の高い支援体制
算定されたLCA/CFPデータの信頼性を対外的に証明するためには、独立した第三者機関による「検証」が極めて有効です。ここで重要なのは、算定を行う事業者と検証を行う事業者は、客観性を担保するために必ず別の機関でなければならないという原則です。
したがって、「算定から検証までを一つの業者が行う」ことはできません。だからこそ、算定を委託するパートナーには、「第三者検証をスムーズにクリアできる品質」と「検証プロセスを円滑に進めるためのノウハウ」が求められます。
具体的には、以下の点を確認をお勧めします。
・検証機関が求めるレベルの、質の高い算定報告書や根拠資料を作成できるか。
・検証機関との質疑応答を円滑に進めるためのサポートを提供してくれるか。
・第三者検証自体をサービスとして実施しているか。(第三者検証の流れやポイントを抑えているか。)
優れた算定パートナーは、検証プロセスを熟知しており、将来の検証まで見据えた質の高いサービスを提供してくれます。
LCA外注・委託の費用相場
LCA算定の委託費用は、評価対象や範囲によって大きく変動します。
・費用を左右する要因
費用は主に以下の要素によって決まります。
変動要因 | |
---|---|
製品・サービスの複雑さ | 部品点数が多い、製造工程が複雑な製品ほど高くなる傾向があります。 |
評価の範囲(スコープ) | 「ゆりかごから墓場まで」全段階を評価するのか、一部の段階に限定するのかで費用は変わります。 |
データの有無 | 算定に必要なデータがどの程度揃っているかによって、データ収集にかかる工数が変動します。 |
・費用の目安
一概には言えませんが、製品のLCA全体評価は100万円~200万円程度の費用がかかることが多いです。また、第三者検証まで含めると数百万円以上になる場合もあります。
また、費用が高い企業は相応の実績や経験、ノウハウが蓄積されていることから、費用のみで検討することもリスクがあります。
まずは複数の機関から見積もりを取り、サービス内容と費用を比較検討することが重要です。
算定費用 | |
---|---|
A社 | 200万円~/1事例 |
B社 | 180万円~/1事例 |
C社 | 120万円~/1事例 |
ALCA | 150万円~/1事例 |
クリティカルレビュー | |
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A社 | 150万円~/1製品(2~3か月) |
B社 | 150万円~/1製品(1か月~) |
C社 | 80万円~/1製品(1か月~) |
ALCA | 100万円~/1製品(2~3か月)※事前確認20万円含む |
その他の選定ポイント
数ある専門機関の中から、信頼できるパートナーを見つけるにはどうすればよいでしょうか。
・国の制度における役割
一つの判断基準として、国が主導する制度への関与が挙げられます。例えば、経済産業省が推進する「GXリーグ」では、企業の排出量削減目標や実績を検証する「第三者検証機関」が登録されています。こうした公的な役割を担う機関は、高い専門性と信頼性を持っていると言えるでしょう。
・豊富な実績と多業種への対応力
自社の業種(例:建設、製造、化学など)におけるLCA算定の実績が豊富かどうかも確認しましょう。業界特有の課題や算定ルールに精通している専門家であれば、より的確なサポートが期待できます。
まとめ:LCA導入の第一歩は、信頼できるパートナー探しから
LCAは、これからの企業経営において避けては通れない重要な取り組みです。しかし、その専門性の高さから、自社だけで完結させるのは容易ではありません。
信頼できる外部パートナーに委託することで、算定業務の負担を軽減し、客観的で信頼性の高い評価を得ることができます。外注先を選ぶ際は、本記事で紹介した「ISOへの準拠」「CFPとの連携」「第三者検証への対応」といったポイントをぜひ参考にしてください。
LCA算定は、もはや単なるコストではなく、未来への投資です。この記事が、貴社のLCA導入の第一歩を踏み出す一助となれば幸いです。
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